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interview

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長谷川哲夫さん

福島潟(ふくしまがた)にて

※インタビュー中に出てくる山菜や潟魚の採取は、潟文化を紹介する特別の催しの際だけに限られており、漁業権をもっている人のみが漁を行うことができます。


潟来亭(かたらいてい)管理人

潟来亭(かたらいてい)管理人のひとりで地元の現役漁師でもある長谷川さん

Q でははじめに、潟での小さい頃の思い出をお聞きしたいと思います。

昔の潟は「宝の山」、小遣い稼ぎの場で、生活の場だね。

Q 今、潟の自然とどのように付き合っていらっしゃいますか?

今の潟は昔とちがって金にならないようになったね。今はただ魚や貝を採って金にするとかだけで(周辺住民は漁業権を持っています)。昔は、鴨を捕って売ったり、魚を捕っても売れたし、でも食文化の変化というのかな、海の魚は食べるけど、川の魚はよく食べないんだというよろしくない風潮が出てきて、そこにもってきてその「鯉ヘルペス」なんていらない報道を一時期されてしまったりして、売れなくなってしまったっていうかね、そういうのが今の現状だね。

Q あなたにとって一番福島潟の好きなところは何ですか?

何がいいかって、カニが獲れるところが一番いいね。(笑)まあ生活に結びつく金になるようなものはいいよね。雑魚は貴重になりましたね、うちらもたまには獲るんだけど、自分で食べるのとか、知り合いに分けるとか、その程度で、売るところまでは獲れないんだよね。

NPO法人ねっとわーく福島潟主催の「水生動物観察会」兼「野菜を食べる会」で引き上げた魚。外来種の魚は増加している/手のひらよりも大きいカラス貝

Q サワグルマ(希少種となった黄色い花の咲くキク科の植物)の花がお好きと聞きましたが。山菜とかも食べられますよね。

近隣の新発田市の一部では「アマノジャク」という属名でよんでいるけど、「あれちょこっともってこうや」という風に昔は山菜として食べていたんですよね。1回食べたらやめれない味だよね。

福島潟では5月中旬から6月頭までの間に希少な群生であるサワオグルマの花がみられる/地元の女の子たちが首飾りにするコオホネ(地域名は河根(カワネ))

Q 子供たちがいろいろ来ると思うんですが、潟をどういう風に知ってもらいたいと思いますか。

学者みたいに子供たちに教えるっていうのはまーよろしくないんだねー。

Q それはなぜですか?

学問的な話はうちら分からないんでね、鳥の名前は地元では、だいたい「ばかどり」「あほどり」「白鳥」「すずめ」「カラス」…そんなもんなんだね。知らない鳥は全部「ばかどり」「あほどり」て呼んでたんだから。今でもそういうのはあるよ、地元のしょ(人)は「何鳥だ?」「ありゃばかどりだわな」、「あれはあほどりだがな」ってそういうやりとりをしますね。

ゴイサギの幼鳥/冬に飛来するオオヒシクイ

Q それはどうしてそう呼ぶんですか?

それは要するに、聞かれても学名を知らねえもんだから。学者に聞くと、学名しか言わないんだね。わしらは生活用語で言うから。それがやっぱりちがうところだね。

Q 子供たちには、「水に入れ、藪に入れ、怖くないから」と言いたいけれど…。

うちらがそうだとしても学校の先生や学者肌の人は「あれすっとあぶない、これすっとあぶない」と言うよね。昔なんかは、危ないのは承知の上で、そこで育ってきたんだものだけどね。家に帰るときになにか採ってこないと親に「おめ、なんにも採ってこねねか」と怒られたもんだよね。いいのを採っていば、「あーよかったよかった、おめ、がんばったな」と言われて。

福島潟は冬に飛来するヒシクイとともに、オニバスの北限の生育地であることでも有名/現役の漁師でもある長谷川さんは潟舟の扱いがピカイチ

Q 今のこの辺の子供たちは何か採っています?

今の子は、親が採らせね。水に落ちっと危ねから。そういう問題じゃないと思うんだけどね。うちらなんてもう、ここで育った人は、舟一つと櫂一つでどこにでも行くだもんね。夏場なんか親も行くんだからさ。潟の奥までどこでも行くんだもんね、夏場なんか泳いでもいくんだからさ。

学習園で草笛を吹いて子供たちや来訪者に地域の遊びを教える長谷川さん

Q この「潟」というのはどんどん変わっていくと思うんですけど、たとえば漁をする人も少なくなっていくと思うんですが、これから潟は観光のための場所になっていくんでしょうか。

観光だけになると自然は壊れてしもうんで。飯豊山系がここから見えるよね、おれはいつも「飯豊は(案内に)行くことあるんか」と聞かれるんだけど、「飯豊だけは登らんね」と答えるんですよね。なぜだかというと、自分の荷物は自分で持ってもらいたいし距離は長いしなんぎ(つらい)し。観光になると自分の車でどんと行かれる--だから金さえ出せばなんでもできるというそういう考え方は困るやね。ここ(潟)は(周辺住民にとって)金を出さずに金を稼ぐ生活のための場所。そういうふうにもっていきたいなとは思っている。

昔ながらの漁の様子を見せてくれる長谷川さん。 このように投網(とあみ)をうまく広げることのできる人はめっきり少なくなった

Q 外国からの旅行者の方に、特に子供たちの旅行者に、どんなところを見せてあげたいですか?

やっぱり水辺だわね、なんだって水なんさ。水と舟なんさ。

「潟来亭」外観/肌寒い時は囲炉裏端で暖をとりながら休憩して、地域の人から話を聞くことができる。/季節になると農家の人が売っている蓮の実と菱の実

囲炉裏では季節の保存食の展示もある/藁のレインコート試着

Q ここは日本だよ、と日本風なものを見せるというものでなく。

そういうものでなくて、ここはほれ、「水があって生物がいる、人間がいる」と。人間と水との関わり、「生活の場」でもあるということ。そういうことを言いたいね。

Q この辺はみなさんで協力してゴミ掃除したりしているんですか?

いろんな形でやっているね。行政主体でやるときもあるし。任意団体でやるときもあるし。あとボランティアでやるときもあるし。何回かそういうのはあるんだわ。

Q 舟に乗らないと拾いに行けないところもありますよね?

うん、そう。今年は4月18日に「クリーン作戦」という行政主導のゴミ拾いがあって、あれどれくらいって言っていたかな、600人くらいで。それに「芦の野焼き」が3月28日だったかな。今年はたまたまよく燃えたんで、漂流ゴミで島の上にあったものは全部燃えたんだよね。島には燃えないゴミだけが残る。そんでその後、子供たち中心にゴミ拾いを日曜日にやったんですよ。テレビ局の主催で、「サワグルマ・ハイキング、花の野遊び」ということで。このとき大人も子供も島の一部にあがって、(燃えないゴミなどを)ひらって、こういう潟の魅力を大事にするんだってことでやったんですよね。でも子供たちはゴミ拾いっていうことより、島の上にあがれるっていうのが楽しそうだったね。新鮮な体験だったわけさね。ここ(岸辺)ばっかから眺めたってもだめ。潟は裏側からも眺めないと潟の魅力はまるっきり半減、何分の一も魅力ない。

潟の奥地には潟舟に乗らなければ行くことができない。 地元漁業権を持っている人たちは奥地の美しさを知っている。 潟舟体験は春や秋の限られた時期に開催。お問い合わせは「NPOねっとわーく福島潟」

イベントでの「新鼻田甲一自治会」による、地域食の「寒ブナだんご汁」ふるまい。地元の人たちが福島潟を愛し、その文化を紹介する活動を行っている

Q 舟に乗らないと見れない景色ですね、それに簡単に行けないからまた、いいんですよね。「潟舟の会」は何人くらいいらっしゃるんですか?

「潟舟の会」は約10人ぐらい。

Q 皆さんここで生活している方たちですか。

いやあー、「潟舟の会」ではあんまり金にならないから地元はあんまり寄らないんだわ。頼めば寄るけどね。地元はほらやっぱり生活の場だから、費用都合がないとなかなか、上手な人はいっぱいいるんだけどね。それで「潟舟の会」で、潟の裏表まで知っているのはおれともうひとりの2人くらいしかいない。その人はおれと同じに潟を生活の場として利用している。潟の中から金とっているから知っているわけさ。今ではそういう人が何人も(「潟舟の会」から)減ってしまったね。

野草のてんぷら、アザミ、ツクシ、ヤブカンゾウ、モチグサ(ヨモギ)などの新芽/ ふわふわな食感が意外な、ナマズやブラックバスなど外来魚の料理/ 骨まで柔らかく煮たフナ甘煮
いずれも「野菜を食べる会」にて

Q この囲炉裏のある「潟来亭」で、皆さん当番でお話しをしているんで すよね。いろんな人が来るでしょうね。

そうそう、いろんな人が来るけど、ここに来て「つまんね」という人はなくて「やっぱ来て良かった」て言ってくれるね。そういうのを心がけながら、話してるんだよね。囲炉裏端で菱の実を焼いて食べてみたり、雷魚とか外来魚を食べる会をしたりしてね。こういう人間との交流を持つようにすっと、また喜んでみんな来る。

潟来亭は現在4人のベテランが管理人をしている。福島潟にはこの他にも水辺の会などいくつかの団体があり、福島潟の環境を守りながらその文化を来訪者に伝えている

Q ほんとにそうですね。

そういう(人との交わり)を大事にしないとね。ここ(潟来亭)寄ってはじめて福島潟に来たって言えるんだよね。

Q すばらしい活動ですね。ありがとうございました。

ー おわり ー


潟来亭(かたらいてい)

潟のほとりにあるヨシの茅葺(かやぶ)き屋根の古民家風休憩所です。囲炉裏を囲んで地元の方々から潟のお話も聞けます。

開館時間:9:00~17:00 休館日:毎週月曜日(休日の場合は翌日)、年末年始12月28日~1月4日

自然学習園ゾーン

観察しながら潟の動植物を学習する野外の場所で、ビオトープや学習園で自然保護について理解を深めることができます。学習園へペットを連れて入ることは禁止されています。


Fukushimagata Lagoon (information)

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情報は2015年10月現在のものです。
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