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interview

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永嶋節子さん

佐潟(さかた)にて

※インタビュー中に出てくる山菜や潟魚の採取は、潟文化を紹介する特別の催しの際だけに限られており、漁業権をもっている人のみが漁を行うことができます。


ハーブランド・シーズンの永嶋節子さん

ハーブランド・シーズン(地元の農業体験型施設)の代表、永嶋節子さん。
JHS(ジャパンハーブソサエティー認定:
上級ハーブインストラクター/ハーブインストラクター養成 認定校/初級園芸福祉士

Q この辺は昔の思い出はどんなものですか?

私はここ赤塚で生まれました。母が野菜を作っていたこの場所から田んぼの坂を下りると小さい笹やぶがあって、そこをかきわけて行くともう潟でした。小さい子供の頃は、すぐこの下が田んぼだったんです。それから、小・中学の時に、ここはマラソン大会のコースでしたね。見慣れた場所を走るから、潟があるから安心というか、花の時は特に嬉しかったですね。あとね、私たちが小さい頃雪が積もると、潟脇のなだらかな坂へビニールの肥袋を持って、「いくろーっ」と小学生同士で誘い合って出かけて、その袋に乗ってすーっとソリみたいに滑って遊んでましたね。佐潟から白鳥の声がしてきて。––今思うと遊んでいるすぐ脇に白鳥とかいるなんて、絵本の世界みたいな感じなんですけど、自然の中でただ遊ぶことに一生懸命で意識していなかった。(笑)そういう思い出もあります。

Q では、ここ(ハーブランド・シーズン)はもとからお住まいですか?いつハーブランドシーズンを始められたのですか?

私の実家はここから歩いていける所にあります。嫁ぎ先も赤塚ですからずっとここに暮らしています。ここは昔からあんまり使われていなかった実家の土地で、ネギ畑だったんです。あっちの奥はゴミ置場みたいになっていたんです。2000年にこの建物をたてたんですけど、その数年前にここで小さなハーブ畑を始めました。体験型農業をやりたいと思ってましたから、その時はハーブはラベンダーだけを植えていただけです。

佐潟の周辺には地域住民の畑がある。ハーブランドシーズンも元は畑の一角だった。

 そんな時、雑誌社の人が『永嶋さんちのラベンダー畑に遊びに行こう』という企画をたててくれました。そしたら1日に30人も申し込みがあって、それから2日目も大勢いらして、「すごく人気でどうしますか?」って言われました。そうやって雑誌に出るようになると、それを見た人たちがどんどんいらっしゃるんです。わざわざ来てくださる方に、満足してもらえる方法がないか考えてみることになったんです。
 そして、「時期の違うラベンダーの花はたっぷりある、みなさんにお花を持っていってもらうようにしたら楽しんでもらえるかな?」と思いついたんです。3000円の体験料に100本のお花と手作りクッキー、フレッシュハーブ付き。それでも仕事としてはまだ本腰ではなかったんです。こんども30人ずつのイベントをなんとか終えました。そうしたらまた、雑誌社の方も参加したみなさんも「ぜひ来年も、もっとこういうのしたいです!」と言ってくれました。
 盛況だったので収入としても多少あったわけなんです。それが自分で初めて手にしたお金だったから…。あの頃は農家の嫁って、お金をほんとにもたせてもらってなかったんですよ。まあなくても生活できるからいいんですけど…「自分で稼いだお金を持つってうれしいな」と実感しましたね。
 それでその時のお金を元手にビニールハウスの小さいのを建てたんですよ。それから挿し木をして苗を増やして、友達にあげたり、本業ではないから気楽にやっていました。そのうち「じゃあ苗も売ってみたら?」って周りの人に言われて、それで景観の良い販売場所を探しました。佐潟対岸と、こちらの土地でどちらにするか悩みました。

ハーブ園の入り口と眺めのいいテラス

Q 対岸の土地とは高台の眺めのいいところですね。

あちら(対岸の土地)は下の潟きわに、昔は家のスイカ畑があったんです。あの場所は「蓮小屋」って地名です。私がお嫁入りして一番最初に畑の名前を覚えたお気に入りの場所なんです。スイカ畑での作業の休憩の時に、目の前に一面に広がる蓮の花をうっとりと眺めるのが好きでしたね。

Q お嫁入りしてすぐ畑のお手伝いをしていたんですね。

もちろんです、私はバリバリ農家を20年以上やってきました。ハーブは体にいいし園芸療法※1として精神的にも効果があり、ハーブには感謝しています。園芸をやる、畑仕事をやるということは、すごく心や体には良かったですよ。
 実はね、出会った人が農業だったから、でもその時は「農業はできないなぁ」と思っていて、他にもいろんなお話もあったもので(笑)。農家の友達は私のところに説教に来ましたよ。「赤毛のアンとか大草原の小さな家とか読んで憧れの話をするけど、現実は違うから」って言って諭されました(笑)。「朝はとても早いんだから」って。その友達の家はメロンを作っていたので、私は朝早く起きて、その子のところに手伝いにいったりしました。ちょっと、やれるかどうかを試してからお嫁さんに行きました。

佐潟の周辺は農家の畑が広がっている。/来訪者は潟の自然のすぐ隣に生活のための畑が広がっていることに興味を持つようだ

 農家のおうちの人は、まず農家のお嫁さんに行きたがらないでしょうね、たいへんだってわかっているから。『頭刈られても赤塚だけは嫁にやるな』という言葉があるくらいですからね。なぜかっていうと、田んぼだけでなくて畑もいっぱいあるので、適当に休みがある兼業農家とは違って、このあたりでは人の手がとにかく必要でしたからね。お年寄りの日雇いの人もどんどん減っていくなかで、農家の嫁はもうたっぷり働くんですよ。
それで良かったことは、これでもかというくらい汗をかいて働いたせいで、でもそれを10年やったからすごく体が丈夫になった。朝早くから働いて、お昼寝してまた夕方出て行って、とにかく肉体を使いましたね。そしてね、細かいものを見なくなったのと、遠くまで眺めているからメガネが要らなくなったの。農業をやったおかげで体が元気になりましたね。
 一方では、つらいこともありましたよ。自然栽培で2月から片時も休まず大事に育てていた苗が、たった一晩の風で壊滅的な被害にあった時もありました。みんなが「風がすごいからスイカ畑に行ってくる!」って二手に分かれてパタパタと出て行ったとき、私も心配で心配で。そんな時はビニールで畑を風から守るのだけど、「手が必要だから行くわ」って言っても「いやお前は身重だからいいや」と言われて。いてもたってもいられなくてついていって、でも覆っても覆ってもだめで、砂嵐のせいでこんなちっちゃい苗が真っ黒けになっちゃって。

Q 風が敵?。

そう、農家にとっては風が敵かな、水じゃないの。この辺は雨が降っても砂地なので溜まらないけど、強風が吹くとね、一晩で大損害だから、ショック。一晩の天候のせいで、2月からやっていた自分の仕事が全部チャラになるってことを思うと、悪いことをしてもいないのに「神様どうして?」って言いたくなっちゃう時もありましたね。

 そしたらおじいちゃんが言ったんですよ「農家の『また来年』だ」って。それは「来年またがんばる」ってことなんですね。「長い一生をかけて、農業はいい時もあるし悪い時もある、来年倍になるかもしれないから」って。その時はため息つきながら聞いていて、でもそれが本当に分かったのは20年くらい経ってからでしたね。
 一方で風に関して言えば、いいこともあって、おじいちゃんが一緒に畑に行くとよく『この風千両』って言ってましたね。松林の中で風の流れる場所をみんな体で知っているのね--あんまり暑いときには、日陰を選びながらそこで休憩するの。「この風千両」っていうのは、クーラーに頼っている人には分からない「何をもらうより今この風のあるところに居たい」という感じの重み、それくらい限界までみんなが暑い中働いているっていうことなのよね。

そういうすごいなぁっていうことを私が学んだのはおじいちゃんとかおばあちゃんからでしたね。おばあちゃんから特に料理を教わったけれど明治の人だったからもう料理はすごい名人、昔の人は本当に料理が上手ですよね。食に関しては「家にあるものをおいしく、そして地域のものを上手に使う」っていうシンプルなもの。おじいちゃんたちも料理の腕前はすごかった。夏の時期には「こうばい」って細長い蓮の茎の料理があるんです。それは小さい蓮だから柔らかくて、白くてね、つなぎのところがまた特に美味しいの。今思うとすごく体にいいものを食べてきましたよ。食べ物がよいから、ほらスーパーのできあい物って農家の人って買わないのよね。
 食に関しては--特に冬になると潟の雑魚とかの料理ばかり食べていましたね。小ブナなどちっちゃい魚に塩をちょっとと、片栗粉と小麦粉をまぶして揚げたの、とか。例えば私の子供たちの離乳食の時、おじいちゃんが小さな魚の揚げ物をつぶしてくれて、離乳食のご飯にふりかけてくれました。私も食べてみたけど「あーおいしい!」って思ったわよね。フナでも鯉でも雷魚でも、おじいちゃんの手にかかるとね、おいしかったですね。稚魚を放流する漁業組合の集まりなんかの時、おじいちゃんはよく料理方として呼ばれて、鯉の活き造りのすごいのを作ったりしていました。一番残念なのは30才になる私の長男が長男がその亡くなったおじいちゃんの技を引き継げなかったということですね。食べた味は覚えているわけですけど、「おじいちゃんの潟料理が伝えられていたらよかったのに」と思っています。

30種類以上のハーブティーを自分の好きなブレンドで飲める。一杯300円、500円でおかわり自由。

Q 淡水魚の料理ってまた別ですものね。

そうなんです、料理屋さんの料理ともまた違って、地元の料理というそのやり方があってね。私も今まだやっていらっしゃる人の話を聞いて、見よう見まねで、蓮料理を作ってみたんです。蓮の葉をつかっておこわを包んだものとか。畑で作っている人参とごぼうが主な具で、ヒラタケやしめじなんかのきのこも入れて蒸すの、それがもうおいしいの。ちょっとゴマ油を入れてもいいしね。包んだ蓮の葉は香りもいいし、素材としてツルっと水を弾くじゃないですか、だから昔は朝おにぎりを握って蓮の葉っぱに包んで持って行きました。殺菌力もあってご飯がくっつかないんです。

Q ハーブがあるのは本当にいいですね。潟の食材と合わせるとなんというか、また一味ちがってくるというか。

 お客さんには蓮の葉包みの料理とか、潟の雑魚を揚げてちょっとビネガーでエスカベッシュみたいなものを作ったりします。ディルとかのハーブはここにあるし、そういうのを出してあげるとみんな喜んでくれてね。秋とか冬でも、お客さんが来た時には、夏のうちに蓮の葉っぱを干しておいたものを一晩水に浸して柔らかくしたらおこわを包めるの。せっかく来てくれた県外の人たちは、レストランの高級料理を求めてここに来るわけでないから、地元のものを喜んでもらいたいですものね。

フランスからの来訪者

Q 体にいい食生活なのですね。

農業をやっていると健康になれるはず。ストレスをためないから。六次産業※1になっているんだから、チャンスもいっぱいあるんです。私はそういう部分では、「ハーブの使い方とか元気になるための方法を伝える」というのは、私の使命だったのかなぁって、今は思います。ここがあったせいで逆に辛い時もあったのだけれど、今あるのは「農業とハーブ栽培をやっていたからだ」と感謝しています。
 それにね、自然信仰みたいかもしれないけど、ここにいると佐潟がね、守ってくれるような気もしています。「ここに来るとさっぱりするよね」って言う人もたくさんいて。こんなに草ぼうぼうのところでも喜んで来てくれるのは、佐潟があるから。私はいっぱいの助けをみんなからいただいていて、ボランティアしてくれる人もいっぱいいるんです。私がその借りを返すためには、やっぱりここを離れないで、すこしずつお礼を返していくというのがね、佐潟にたいしても感謝になるのかなって。

Q ここ自体がサロンというか、コミュニティ広場みたいなものになっていますよね。

観光客だけでなくて、ゴミ拾いのボランティア団体の人たちが来てくれたり、障害者のひとたちも来てくれたり、ハーブランドの「ランド」は「広場」って思っていたから、いいなぁと。みんなが来られる場所であり続けたいですよね。気軽によってもらえるように。

Q ハーブ農業は、たとえば都会の人が憧れて、急に思い立ってできるっていう甘い職業ではないですよね。

それなりにたいへんなのよね。私は今年3度目になるけど蜂にさされて、見ていたみんなの方がパニックになって。でもここには鳥も虫もいるし、特に無農薬だから蜂がいるんですよね。イベントの時は蜂保険かけてるんですよ。世界ではミツバチが激減していますけど、農薬を使っていないからこの辺りはまだいっぱいいます。

Q まったく使わないというのも農家にとっては厳しいものかと。

私も畑でも絶対使わないでやってみよう、と途中まで試したけど全滅してね、あと15日で収穫というスイカの玉がぜーんぶ菌にやられて、ずっと丹精込めていたものが台無しになってしまったこともあったんですよ。いろんな失敗しましたね。でもね、立ち向かうことも大事ですよね。それで「ハーブケア」※2という栄養剤を作ったんです。にぎり唐辛子とかが原料の、農薬無しで作れる作物の虫除けをHPで売っています。ただ農薬ではないですからね、予防用だから弱いので。家庭菜園くらいならそれで十分だと思いますよ。あとまめに虫退治ですね。

Q ここはハーブ販売が目的ではないのですよね。その土地ならではの食文化に触れる体験などを味わえるところなんですよね。

ここの場合はハーブだけじゃなくてハーブの利用法を伝える講座が商品です。例えば、パッケージ化された「とことん講座」とかは銀座の方から毎年グループの方たちが遠足がてらに参加されています。新幹線を使って来てくださるんですからうれしいですよね。メイワサンピアさんとか、カーブドッチさんとか、岩室温泉の宿泊付きで。今回は『ヨモギ講座』で、ヨモギで染物をしたり、漢方の話、ヨモギのてんぷら、笹団子作りとかをしました。
 みんな喜んでくださって、それを見たおばぁちゃんには「なんにぃ、ヨモギなんて揚げてないで、もっとごっつぉしてあげんかに」て言われてしまって、でもヨモギの講座だから(笑)。「東京から、わざわざここにはヨモギを食べに来ているのよ」と言ったら、「はぁーーん?」て(笑)。ここではヨモギは道端にいくらでも生えている雑草のようなものだから価値観が違うものですからねえ。おばぁちゃんの漬物は人気がありますからそれも出します。

Q 潟の恵みですね。

 佐潟はなんで人が集まってくるかっていうと、ここには「心の浄化力」があるんじゃないかって言われていますね。「ここに来るひとたちもいろんなことがあっても、つらい思いをここに置いていく」っていうね、そうすると佐潟は、「だまってそれを受け取って、浄化してくれてる」っていう--そういうところだそうですよ。

Q ほんとうに気持ちのいい潟環境ですね。ありがとうございました。


Herbland Season(ハーブランド・シーズン)

ハーブ体験教室、料理教室、音楽ミニコンサートを開催など、70種類以上のハーブティも飲めます。

新潟市西区赤塚5073 TEL: 025-239-3288 www.herblandseason.com
開館時間:10:00〜17:00 休館日:水曜日、冬季(2月)

※1 農業や水産業などの第一次産業が、食品加工・販売や観光農園のような地域資源を生かしたサービスなど、業務展開している経営形態。
※2 ハーブランドシーズンで販売しているハーブ由来の虫除けスプレー液。


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情報は2015年10月現在のものです。
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