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interview

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アーティスト:大矢りかさん

鳥屋野潟(とやのがた)にて

※大矢りかさんは「新潟市水と土の芸術祭2015(会期終了)」の参加作家です。詳しいプロフィールはこちら。(外部リンク)


大矢りかさん

大矢りかさんは東京生まれ。日本国内の他、スウェーデン・オーストリア・イタリア・韓国・オーストラリア・スコットランド等で制作発表が多数ある世界的なアーティストです。その地で集めた木・土・草で、大きな舟をつくり続けています。この春、水と土の芸術祭2015のために新潟に来訪し、鳥屋野潟の岸辺で作品制作を数ヶ月に渡って続けました。そんな大矢さんに、来訪者(作家)の目で見た鳥屋野潟についてインタビューしました。 

大矢りかさんの作品制作ドキュメンタリー動画。9min 42sec

Q1 鳥屋野潟を初めてみた時の印象を教えてください。

第一印象って、お天気に左右されるから。冷たい雨は降ってるし、木々はすっかり葉っぱを落として、人も鳥すらもいないし、、、鳥屋野潟、さびしいところだなぁって感じた。でも空が広かったのが印象的だった。

鳥屋野潟は都市の中心に広がる湿地帯としても珍しい存在

スポーツ公園、図書館、博物館、球技場が周囲にあり、市民の憩いの場となっている

Q2 世界中の潟でも作品を作られていますね。

オーストラリアで、渡り鳥が来る湿地保全のためのアートフェスに参加したことがあります。そこの池では、人々が自家用ボートを持ってきて遊んだり、魚を釣ったりしてました。「保護」だから、あれしちゃダメこれしちゃダメ的なスタンスではなく、もっと普通に、遊びの場憩いの場としてあった。池の周りぐるりと木道があり、そこから下りてはダメという、湿地を保護するための規則はあったけど。
 私の制作現場のあたりに、タイガースネークって猛毒の蛇がいるよっておどかされて。咬まれたらすぐ連絡してって。でもそこ、携帯の圏外だったし(汗)。人間にとって有害なものとも共存するというか、ちょっと人間のほうが気をつければいいんだよね。そういえば、野生のカンガルーにも会ったっけ。

Q3 場所を決められた時のポイントはありますか。

ココに決めた!って、急に。他はありえない!って。潟がよく見えるとかは、後付けの理由。いつも何かを決める時は、しばらく考えて、あとは放っておく。そうすると、突然、何かが降りてきて(笑)。

Q4 舟の中に田んぼがありましたね。

舟の中の田んぼ。舟本体は、徐々に枯れて朽ちていくけど、田んぼの稲は成長してやがて実りを迎える。その対比がおもしろいかと。
 作品に稲という生きものを使うことで、枯れたらどうするんだ?というご批判も初めはありました。でも大丈夫って思ってた。何の根拠もなかったけど。そしてその通りだった。新潟の人が、稲を見捨てるはずがない!多くの人たちに見守られ、お世話をしていただき、ちゃーんとずっしりと実りました。感謝です。

鳥屋野潟は周囲をめぐる遊歩道があり桜の並木もみごと

Q5 作品制作はいつ頃から始められたのですか?

つくりはじめたのは、オオヨシキリが、朝早くからにぎやかに鳴き交わしていたころ。で、その時は、あぁこの鳥は、ずっとこうやって鳴いているんだって思ってた。オオヨシキリって名前すら、知らなかったんだけど、その時は。そしたら、ある日を境に、急に声が聞こえなくなったの。急に。パッタリと。あぁ、鳥は『時』を知ってるんだなぁと。『時・right time』を知らないのは、人間だけだなぁと。

作家 大矢りかさん photo: U・STYLE

Q6 潟にある素材を集めてきて作品を作るというものでしたね。制作中に鳥屋野潟で会われた人たちとのエピソードなどを教えてください。

毎日のように通りかかる常連さんが、あそこにこんなものがあるよ、と教えてくださったり、きっとアンタこれが好きでしょ?と持ってきてくださったり。
 見つけるたびに鳥の羽根を拾い集めていたら、知らない間に羽根が増えてる?!ははーん、あの常連さんのしわざかな?と思ったり。
私にとっておもしろいのは、その場のその時にしか出会えないモノに会うってこと。
 鳥屋野潟で出会ったのは、木、枝、草、丈夫なつる、花壇に生えていて邪魔物扱いされていた枯れ草。羽根に木の実。砂に土、粘土。こういうモノって、材料の見積もりを立てて注文してって、できないよね。できないし、おもしろくない。
 そうそう、鳥屋野潟のぐじゅぐじゅしたあたりを少し掘ったら粘土が出て来ました。持ち帰って陶芸窯でテスト焼成。ふふふ、次の新潟での制作の素材かな?

鳥屋野潟の岸辺にひろがるヨシ原。都会の真ん中に人の踏み込めない自然がある

Q7 野外の作品制作ということで、いろいろ困難もありましたか。

えっ?困難?私、アウトドア派ですから(笑)。どんな小さな作品でも、外で作るのが好き。なぜだろう?? 部屋の中でつくっていると、どんどん小さな穴の中に入っていってしまうような気がする。外でつくっていると、風が自分の中を吹きぬけていくように感じる。それが、とっても心地よいのよ!
  暑ければ暑さの楽しみ、雨は雨の楽しみ、強い風には心が躍る。朝の鳥の声、昼の日差し、夕焼けの色、日に日に成長していく植物。世界は美しく、自分はその中のほんの小さな一員なんだと感じさせてくれる。アートなんて大そうなことを言ってないで、世界をごらんって、思う。作るのがたいへんなんて!? つくる喜びとつくれるシアワセに満たされていました。

Q8 出来上がった作品に乗ってみるとまた違った鳥屋野潟の景色でした。完成後に来訪者の方々に、現場で会う機会はありましたか?

舟の向こう側に、大きなクルミの木があります。まだ青い実をたわわにつけた、ゆったりと豊かな木でした。そのクルミの木と舟とがよく似合うと話されていた常連さん、ある日そのクルミの入ったお手製ケーキを差し入れてくださった。鳥屋野潟の味! 西洋グルミと違って、和グルミは殻が固くて実を出すのはすごく手間がかかる。ありがたさと美味しさを、かみしめていただきました。
 クルミの木は水が好きで、成長も早いとか。そのため公園側にとっては、ちょっとやっかいな存在。水辺に増えすぎれば、潟も見えなくなる。収穫の楽しみも残しつつ、共存していって欲しいです。

船に乗って作品鑑賞できる/船の中では鑑賞者も水やりをした稲はすくすく育った

Q9 舟はこの後(芸術祭が終了したため)撤去してしまうのですか?

作っているうちから、この舟残せないの? 壊しちゃうのもったいない!というお声を数多くいただいていました。始めのころは、芸術祭終了後すぐ撤去と言っていた事務局も、いつのまにか、??なぐらい態度が軟化し(笑)設置延長となりました。(後、2016年12月24日に撤去)

最後は、舟を送るクロージングイベントをしました。解体された舟に火を放ち煙と共に天へ送り、地に還るのを見守りました。行事としてその場で杵つきをしたお餅は、舟の中で育ったおコメも混ぜて炊いたもので、みんなで食べました。一粒食べれば、三年長生きする、くらいの味! それに 宇宙っぽいおでんを食べたり、新潟の潟の歴史を地元の人々とともに学んだりしました。一番寒い時期に、みんなでつどい、心がほっこりとなるようなイベントとなりました。

白鳥の飛来地としても有名である鳥屋野潟にはたくさんの野鳥が生息している

Q10 鳥屋野潟は広いのですが、全周囲はご覧になる機会はありましたか。たとえば対岸など行かれましたか?

 

対岸の夕日の沈む方角、大きな看板のあたりとか、舟のへさきのずっと向こうの白と赤の鉄塔とか、こっちから毎日見ていたら気になってね。どんなところかなって。自転車で行ってみたけど、、、ガッカリ、だった。

鳥屋野潟は大昔からの治水工事で出来上がった潟。困難な工事を志した、いにしえの者たちのモニュメント

Q9 制作後、鳥屋野潟に関するなにか感想のようなものはありましたか。

潟をぐるっとできる遊歩道やサイクリング道路があればいいのにね。それにもっと水辺の近くまで行ければいいのにね。水にさわれないって、残念。 数年前まであったボート屋さんがなくなったって、これもとっても残念。
 潟舟・田舟レースとかどう? 地区対抗で清五郎杯は?! 田舟はもともとスピードを求めてないところがミソ。燃えるよ、絶対! 新潟市民のDNAには絶対に舟の遺伝子が組み込まれてるから。小中学校で、田舟漕ぎが必須とかは?
水位調節池としての潟、だけじゃなく、里山のような意味での里潟になっていけばいいなと。

鳥屋野潟の土と落ちていた木でできた舟はそのまま風景に溶け込んでいた

Q そうですね。「潟」というものがもっと身近に匂いや感触や音を感じられて、子供の頃の記憶に繋がる場所であって欲しいですね。大矢さんの作品はそのことを思い出させてくれたと思います。ありがとうございました。

***END


大矢りかさん 公式ホームページ www.ohya-rica.com

★大矢りかさんの鳥屋野潟にある作品は、2016年の12月までひきつづき設置され、25日に撤去されました。

鳥屋野潟の上を飛んでみよう

ポートレイト写真協力 U-style


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情報は2015年10月現在のものです。
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